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JMDCデータの学術利用事例紹介 第2回 医療レセプトデータを用いた小児喘息と関連する要因に関する研究

更新日:2023年6月23日

前回に引き続き、JMDCのデータベースを小児領域の学術研究にご活用いただいた事例を紹介していきます。


今回は、愛知医科大学医学部 衛生学講座 教授の鈴木 孝太 先生が、令和3年度厚生労働科学研究費補助金・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業-母子保健情報を活用した「健やか親子21(第2次)」の推進に向けた研究-(研究代表者:上原里程氏)から助成金を得て取り組まれた「医療レセプトデータを用いた小児喘息と関連する要因に関する研究」よりご紹介します。


  • はじめに

近年、医療レセプトやそれと連結した健診データなどのリアルワールドデータ(Real World Data:RWD)を用いた検討が行われていますが、周産期から小児にかけては、RWDを用いた検討はあまり行われておらず、小児の健康や疾病に関するRWDの利用はまだ進んでいません。そこで、本研究では、株式会社JMDCとの共同研究として、小児期のRWDを親の医療レセプトデータや健診データと連結することで、小児期の喘息に関連することが考えられている、両親の喘息の既往や喫煙との関連を検討しました。


  • 方法

研究対象者は、JMDC保険者データベースにおいて、2018年1月から12月に観察されている2019年1月時点で0~12歳(小学生のみ)の小児を対象に、その親(被保険者本人、配偶者)の健診データを連結し、両データが揃っている親子です。前述の対象者について、2019年1月から12月に喘息(ICD-10小分類コード:J45)という傷病名がついている人を喘息ありと定義しました。また、親の喘息既往歴については過去の「喘息」という傷病名の情報を、親の喫煙状況については健診データの問診項目にある喫煙に関する問診の情報を、それぞれ用いました。


  • 結果

【両親の喫煙状況と児の喘息との関連】

解析対象は355,387組の親子となりました。

0~12歳の全体で集計すると、父親が喫煙している児 / 母親が喫煙している児 の方が、喫煙していない児と比べて、喘息ありの割合が低い結果が得られました。一方で、児の年齢別に検討したところ、0~1歳、1~2歳に関しては、父親が / 母親が喫煙している児の方が、喫煙していない児と比べて、喘息ありの割合が高く、特に母親の喫煙で強い関連が示されました。


【両親の喘息既往と児の喘息との関連】

解析対象は547,981組の親子となりました。

母親と女児については、母親に喘息の既往があった44,765人中20,681人(46.2%)、既往がなかった83,598人中27,574人(33.0%)に喘息の傷病名があり、親の既往があると有意に児の喘息ありの割合が高くなっていました。

母親と男児については、母親に喘息の既往があった29,134人中15,104人(51.8%)、既往がなかった53,502人中19,692人(36.8%)に喘息の傷病名があり、親の既往があると有意に児の喘息ありの割合が高くなっていました。

父親と女児については、父親に喘息の既往があった43,861人中19,859人(45.3%)、既往がなかった93,659人中33,671人(36.0%)に喘息の傷病名があり、親の既往があると有意に児の喘息ありの割合が高くなっていました。

父親と男児についても、父親に喘息の既往があった65,103人中32,140人(49.4%)、既往がなかった134,359人中53,953人(40.2%)に喘息の傷病名があり、親の既往があると有意に児の喘息ありの割合が高くなっていました。


  • 考察

児の喘息については、両親、特に母親の喫煙が、乳児期から幼児期早期の喘息と関連していました。小児の受動喫煙については、厚生労働省の「喫煙と健康」報告書でも、喘息の既往や喘息の重症化、小児喘息の発症などとの関連が示されており、今回の結果からも、特に乳児期から幼児期早期にかけて、受動喫煙との関連がうかがわれました。しかし、幼児期以降は、受動喫煙と喘息での受診については有意な関連が認められなかったことから、乳幼児期に児が喘息と診断された場合、その後親の喫煙が抑制されている可能性、特に、妊娠中に禁煙していた母親の再喫煙が抑えられている可能性が考えられました。ただし、今回の検討は一時点のデータを用いた横断的なものですので、今後、対象者を経時的に追跡する縦断的な検討を行うことで、これらについて更に明らかにすることができそうです。

親の喘息の既往に関しても、児の喘息と関連があり、特に母親でその影響が大きいことが示されました。ただし、前述の喫煙の影響なども考えられるため、今後、他の要因を含めた検討を行うことで、より明らかにできることが期待されます。


喘息については、保険診療上の傷病名と、医学的な診断は必ずしも一致するものではなく、今後、処方されている薬の情報や、受診頻度も含め、詳細に検討することが必要です。また、医療レセプトデータの特性上、両親のデータが両方存在する児と、父親、母親どちらかのデータのみが存在する児で、社会経済的な背景などに偏りが存在する可能性もあり、これらの情報がある他のデータと併せて検討することで、より詳細な関連を明らかにできるかもしれません。


  • まとめ

小児期の医療レセプトデータを親の医療レセプトデータや健診データと連結し、小児期の喘息と、両親の喘息の既往や喫煙との関連を検討したところ、両親の喫煙、特に母親の喫煙が児の喘息と関連していること、また、両親の喘息の既往が、児の喘息と関連していることが示されました。



引用:厚生労働科学研究 19DA1003 医療レセプトデータを用いた小児喘息と関連する要因に関する研究 報告書原文


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