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JMDCデータの学術利用事例紹介 第3回 医療レセプトデータを用いた小児喘息と両親の喫煙に関する研究

今回も、JMDCのデータベースを小児領域の学術研究にご活用いただいた事例です。

愛知医科大学医学部 衛生学講座の鈴木 孝太 先生と、同講座の川越 隆 先生が、令和4年度厚生労働科学研究費補助金・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業-成育基本法を地域格差なく継続的に社会実装するための研究-(研究代表者:山縣然太朗氏)の一部として取り組まれた「医療レセプトデータを用いた小児喘息と両親の喫煙に関する研究」よりご紹介します。



【はじめに】

小児期の喘息に関する医療レセプトデータを、親の健診データと連結し、一般に小児期の喘息発症や重症化に関連すると考えられている両親の喫煙状況と、外来での喘息診断の有無・入院での喘息診断の有無・外来で喘息と診断を受けてからの入院の有無、それぞれとの関連について検討しました。


【対象者】

2019年1月時点で0~12歳(小学生のみ)で、同期間の医療レセプトデータがあり、またその親(被保険者本人、配偶者)の健診データと喫煙状況を連結できる親子を対象としました。


【解析方法】

児の喘息の状況については、2019年中に外来および入院で、喘息(ICD-10小分類コード: J45)という傷病名がついているかどうかを指標としました。

親の喫煙状況については、健診データにある問診項目にある喫煙の有無を用いて、「両親とも喫煙」「どちらかの親のみ喫煙」「両親とも非喫煙」の3群に分けて分析しました。

【両親の喫煙状況と児の喘息に関する検討】

対象者は2019年1月時点で 0~12歳の児と、連結された両親との、計77,034組となりました。児の男女の内訳は表のとおりです。

この77,034組の中で、

  • 両親とも喫煙している児は     1,867人(2.4%)

  • どちらかの親のみ喫煙している児は 22,096人(28.7%)

  • 両親とも非喫煙の児は       53,071人(68.9%)

でした。


各群において2019年中に外来で喘息と診断されたのは、

  • 両親とも喫煙していた児で     729人(39.1%)

  • どちらかの親のみ喫煙していた児で 8,997人(40.7%)

  • どちらも非喫煙の児で       22,443人(42.3%)

であり、家庭内の受動喫煙と喘息診断との全般について有意な関連が認められたわけではありませんでした。


一方で、児の年齢別に分析すると、0歳児に関しては、外来で喘息と診断された割合が

  • 両親とも喫煙していた児で     46.7%

  • どちらかの親のみ喫煙していた児で 38.3%

  • 両親とも非喫煙の児で       37.1%

であり、両親とも喫煙していた児の該当割合が、他の2群と比べて高くなりました。


次に、2019年中に入院で喘息と診断されたのは

  • 両親とも喫煙していた児で     14人(0.8%)

  • どちらかの親のみ喫煙していた児で 152人(0.7%)

  • 両親とも非喫煙の児で       378人(0.7%)

であり、この傾向は、児の年齢によらずおおむね共通していました。


最後に、外来で喘息と診断された児のうち入院になったのは

  • 両親とも喫煙していた児で     14人(1.9%)

  • どちらかの親のみ喫煙していた児で 152人(1.7%)

  • 両親とも非喫煙の児で       378人(1.7%)

で、児の年齢別に検討すると、特に0歳児に関して、両親とも喫煙していた児(7.1%)で、どちらかの親のみ喫煙していた児(5.2%)や両親とも非喫煙の児(4.2%)と比べて高いことがわかりました。


【まとめ】

JMDCのデータベースで、児の医療レセプトデータ(外来・入院における喘息の診断状況)と親の健診データ(喫煙状況)とを連結したところ、特に乳児期において、両親がともに喫煙していることが、児の喘息診断と関連していることがうかがわれました。また、外来を受診し、喘息と診断され入院に至った患者の割合については、乳児期・幼児期ともに、両親が喫煙している児で高い傾向がありました。

小児の受動喫煙については、厚生労働省の「喫煙と健康」報告書でも、喘息の既往や喘息の重症化、小児喘息の発症などとの関連が示されていましたが、今回の結果でも、特に乳児期で喘息の発症や、乳幼児期での喘息の悪化と、受動喫煙との関連を有することがうかがわれました。

一方で、今回の分析では、受動喫煙と喘息での受診全般について有意な関連が認められたわけではありませんでした。このことについては、乳幼児期に児が喘息と診断された家庭では、その後親が禁煙した可能性が、特に妊娠中に禁煙していた母親の再喫煙が抑えられている可能性が、考えられます。

今回は、児の年齢ごとに、児の喘息の有無と親の喫煙状況を検討する横断的な分析にとどまっていますので、この点について直接明らかにすることはできませんでしたが、今後、出生時から喘息が発症するかどうかを追跡する縦断的な検討を行うことで、より深い考察が得られそうです。



引用:厚生労働科学研究 21DA1002 医療レセプトデータを用いた小児喘息と両親の喫煙に関する研究 報告書原文(掲載予定)

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