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小児の眼疾患 第2回 ドライアイ・斜視の年齢別有病率推移

株式JMDCではBIG DATA for CHILDRENの活動の一環として、小児のデータ分析に取り組んでいます。前回からは、小児の視力の実態調査にフォーカスしています。

第1弾に続き第2弾では、ドライアイと斜視の年齢別有病率の推移を中心にとりあげます。


近年、テレビゲームやスマートフォン、タブレット端末を長時間見るこどもが増えているとの指摘がありますが、ドライアイや斜視を発症するこどもの割合に変化はあるのでしょうか?


そこでJMDCが保有する、健康保険組合の加入者の方々からお預かりしているレセプトデータを用いて有病率を調査してみました。

なお、本記事での有病率とは、JMDCが保有するデータベースの母集団のうち、分析の年齢別に、分析の期間内に、ドライアイ・斜視の傷病の診断を一度でも受けた人数、またコンタクトレンズ検査を一度でも行った人数の割合を指します。そのため、期間内に受診歴のない場合などについて捕捉できていなかったり、当該病名に関連する治療が必要と判断されると医学的な診断に関わらず傷病名が付与されることがあり、結果的に過大な捕捉となりうることを申し添えます。


本文分析の母集団数、および傷病と検査項目の定義は以下の表でお示ししています。

まず、ドライアイの診断がされた子供の割合を調べてみました。そもそもドライアイとは何を指すのでしょうか。日本眼科学会によると「涙には、目の表面に広がって崩れない性質がありますが、その性質が失われ、崩れやすくなり、目の不快感や見えにくさを生じる病気がドライアイ」とされています。


JMDC独自に有病率を算出した結果が以下の表です。


2017年、2021年ともに、12歳頃前後から上昇が大きくなり、14歳と15歳の間で最も大きな上昇がみられます。2017年と2021年との比較では、6~17歳の全年齢で有病率が増加していました。

15歳は高校入学の年齢でもあります。例えば、コンタクトレンズの装用はドライアイの要因の一つとも考えられていますので、高校生になり、コンタクトレンズを装用し始める人が増加することとの関連などが考えられました。

15歳から16,17歳にかけて有病率が減少していることについては、自治体によっては16歳は医療費の自己負担が始まる時期となりますので、市販の点眼薬の購入などセルフメディケーションを活用し、受診を控えることなどが考えられました。


ドライアイの診断を受けた者の年齢別内訳もお示しします。2017年と2021年で比較しますと、12歳以下の小学生の年齢層が占める割合が相対的に増加していることがうかがえます。ドライアイを発症する要因として、パソコンやスマートフォンなどのモニターを長時間見つめることによるまばたきの減少も知られていますので、この間に1人1台のICT端末を導入する小学校が増加したこととの関連などが考えられました。



次に、斜視の有病率の推移を調べてみました。斜視とは、日本眼科学会によると「物を見ようとする時に、片目は正面を向いていても、もう片目が違う方向を向いてしまっている状態、左右の視線が合わない状態」と定義されており、遺伝と環境と両方の影響を受けることが知られています。斜視の症状では、視線のずれのほか、頭位異常(頭をかしげている、顔を曲げている、顎を上げている等)や片目つぶりが目立つことがあります。斜視は生後数カ月で現れることもあれば、小児期のもっと後になってから現れることもあります。


では斜視の有病率を年齢階層別にみてみましょう。

2017年と2021年とを比較しますと、斜視についてはすべての年齢階層で有病率が上昇していました。特に6歳から10歳では、2017年時点ではいずれの年齢も4%台であったのが、2021年には5%を超え、もっとも高い6歳児では5.6%となっていました。

斜視では、年齢階層が上がるにつれ有病率が下がる傾向が見られました。年齢階層が上がるにつれてデータ上の有病率が下がることについては、就学前健診での指摘を機に6歳前後で受療率が高まり、そのうち何年間か継続受診する児が一定数いるものの、その後受療率が低下することによる影響が考えられました。



なお、2017年から2021年で、年にコンタクトレンズ検査を1回以上受けた人数の割合も調査してみました。

2017年から2021年まで一貫して、6-11歳では0.2%未満で、12-14歳では6から7%で、15-17歳ではおよそ20%で、それぞれ推移していました。年齢別の内訳には大きな変化はありませんが、中学生以下の若年層が占める割合が少し増加していました。


おわりに

今回は、ドライアイと斜視の有病率を中心に、小児の視力に関して調査してみました。

ドライアイ・斜視ともに、同年齢での経年比較で有病率が増加していたことについては、デジタルデバイスやオンライン授業などが普及し、長時間画面を見る児が増えてきたなどの環境要因との関連が考えられました。

一方で、一時点で年齢別にみると、ドライアイ・斜視ともに特定の年齢層で有病率が減少していましたが、いずれも自然治癒自体は稀な疾患と言われていますので、受診を中断する児が一定数いることとの関連が考えられました。

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