新型コロナで感染対策が徹底されても減らない感染症とは?~COVID-19の感染拡大と他の感染症の動向~
COVID-19の感染拡大に伴って、感染対策が徹底されるようになり、多くの感染症が減少したことが報じられています。
特にインフルエンザについては、2020年冬以降大きく減少したことを実感されている方も多いのではないかと思います。
そこで、JMDC保険者データベースより算出した、小児でよく見られる感染症の、2020年以降(COVID-19の感染拡大時)の国内推計患者数を、2019年(感染拡大前)の同月の国内推計患者数と比較してみると、病原体・疾患によって、下記のような3つのパターンが存在することが見えてきました。
パターン① | 感染者が激減し、拡大傾向がまだ見られない (インフルエンザ、咽頭性結膜炎など) |
パターン② | 感染者が一時減少したが、元に戻りつつある (ロタウイルス性腸炎、手足口病など) |
パターン③ | 感染者が一時減少した後、反動で感染ピークが早期化 (RSウイルス細気管支炎など) |
ひとつずつのパターンについて、詳しく見て行きたいと思います。
パターン①:感染者が激減し、拡大傾向がまだ見られない
パターン①のインフルエンザ、咽頭性結膜炎(アデノウイルスによる角結膜炎・結膜炎)については、2020年4月以降一貫して、2019年同月比50%以下に抑制されていて、感染拡大の傾向がまだ見られません。
要因としてはまず、2020年以降COVID-19の感染予防のために基本的な感染対策が徹底され、結果的にインフルエンザウイルスやアデノウイルスのまん延が抑制されたことが考えられます。インフルエンザは今回のデータでも過半数が成人を占めていますし、咽頭性結膜炎は、今回の2020年以降のデータでは小児がおよそ9割を占めていますが、従来は成人にも多く発症すると言われている疾患です。そのため、もともと小児を中心にまん延すると言われている感染症よりも、2020年以降、社会全体としてまん延防止が徹底されやすかったのかもしれません。
さらに、インフルエンザウイルスについては、従来であれば流行するはずの冬場に、2年連続2019年度比でほぼ0となり、その抑制が顕著です。インフルエンザウイルスについてはCOVID-19との「干渉」が論じられているように、COVID-19のまん延に伴い、相対的にインフルエンザウイルスのまん延が抑制されたということも考えられます。ウイルス干渉とは、感染力が強いウイルスが流行している間は、相対的に弱いウイルスの流行が抑制される現象のことです。
パターン②:感染者が一時減少したが、元に戻りつつある
パターン②のロタウイルス性腸炎、手足口病は、2020年6月前後でいずれも激減しましたが、新型コロナ以前より0-5歳が患者の大半を占める疾患なので、講じられる感染対策に限度があるものと考えられます。園での集団生活などが従前のスタイルに近づくにつれ少しずつ増加し、2019年同月比100%(同数)に近づいている傾向がうかがわれます。
パターン③:感染者が一時減少した後、反動で感染ピークが早期化
パターン③のRSウイルス細気管支炎は、グラフ上は2021年6月に対前年比では700%程度と大きく拡大しているように見えます。 ただし、実数を見ると、これは感染ピークが前倒しになったことが要因で、2021年の12ヶ月分の合計と2019年の12ヶ月分の合計はいずれも約5万例で、年間合計ではほぼ同数でした。
RSウイルス感染症の基本的な特性として、例年のピークは11~12月にあらわれることや、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染することなどが知られています。そのため、2020年に年間を通じて感染が少なかった反動で、2021年は例年よりも早い時期に感染のピークが前倒しされたのかもしれません。
ちなみに、これら5つ以外の感染症についても探索的に調査をしましたが、新型コロナによる感染対策が急速に強化された時期は、どの感染症も患者数が減少する傾向がみられました。
COVID-19の感染者数や社会的な対策については、今後も変遷することになりそうですが、基本的な感染対策(手洗い・消毒、換気、一人一人の体調管理など)が多くの感染症に有効であることは確かなようですので、生活習慣として根付かせて行きたいですね。
次回は、小児の新型コロナ感染者の中で重症化する患者の割合について、感染拡大フェーズごとの違いや、成人との違いを見て行きたいと思います。
まとめ
新型コロナによる感染対策が急速に強化された時期は、どの感染症も総じて患者数が減少
もともと成人にもよく発症する感染症と、幼児を中心に発症する感染症、乳児を中心に発症する感染症とで、再燃のパターンが異なる傾向
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