子どもはコロナに罹りにくい?~小児におけるCOVID-19患者数推移 ~
BIG DATA for CHILDRENの活動の一環として、小児のデータ分析に取り組んでいます。
今後いろいろなテーマで報告をお届けしていきますが、最初の連載として、小児のCOVID-19についてご紹介します。
全国のコロナ感染患者数については毎日情報が発表されていて、トレンドの把握は比較的容易ですが、特に小児に限って感染状況を見ようとすると意外と情報が不足していることに気づきます。
そこで、今回は0-17歳の小児の患者数推移についてJMDC保険者データベースを活用して分析してみました。
JMDC保険者データベースは、1,000万人を超える健康保険組合に所属する加入者の医療データを匿名加工されたものです。辞書による標準化が行われており、疾患領域を問わず、性別や年齢別の有病率や発症率を把握することができます。
まず初めに、新型コロナウイルス感染症について、国の公表人数(COVID-19陽性者としてHER-SYS※1 に登録された人数)と、JMDCデータを用いた国内推計患者数※2(新型コロナウイルス感染症と病名がつけられる推計人数)との月次推移を示します。
両者を比較すると、トレンドとしてはいずれも同様であることが見て取れると思います。
しかし、国の公表人数では陽性者の全てが含まれているのに対し、JMDCデータを用いた推計患者数では「新型コロナウイルス感染症」と医療機関で病名がつけられた患者数の推計であるため、特徴的な差がみられます。
例えば、2020年8月や、2020年12月~2021年1月、2021年4月~5月、2021年8月など、波がピークを迎えるまでの間は国の公表人数がJMDC推計患者数を上回っています。一方で、2020年9月~10月、2021年2月~3月、2021年6月、2021年10~12月など、波がピークを越えた後では、JMDC推計患者数が国の公表人数を上回っています。
これは、波のピーク時など、感染者数がその時の医療機関での受け入れ可能な量を上回った場合には、医療機関を受診せずに療養される方が増え、結果的に感染者であっても病名がつかない方が出てきていることが考えられます。
また、波がピークに向かうまでのある程度の段階までは、保健所などの行政機関が無症状を含む新たな感染者を積極的に補足しているのに対し、感染者数が一線を超えた後の数週間は、保健所なども既知の感染者をフォローする業務量との兼ね合いで、新たな感染者の積極的な把握までは困難になっている状況があらわれているとも考えられます。
次に、JMDCデータを用いた小児(0-17歳)の推計患者数と、各波のピーク時における、全年齢に占める小児(0-17歳)の割合を示します。
増減そのものの傾向は、全年齢でも小児(0-17歳)でも基本的には似通っていますが、デルタ株、オミクロン株といったウイルスの変異や、成人におけるワクチン接種者の増加などの影響を受けて、徐々に0-17歳の感染者数が全体に占める割合が増えてきていることが分かります。
健康保険組合ベースのデータは活用できるようになるまで少しタイムラグがあるため、今回の分析では2022年1月までのデータが含まれていますが、最新データの更新に伴い、新たな傾向が認められた際には更に追加の分析をしていきたいと思います。
次回は、コロナの感染拡大とともにインフルエンザなどの他の感染症がどのような変化をしたか、見て行きたいと思います。
参考文献:
Nagai K, Tanaka T, Kodaira N, et al. Data resource profile: JMDC claims database sourced from health insurance societies. J Gen Fam Med 2021; 22: 118– 127. http://dx.doi.org/10.1002/jgf2.422