COVID-19関連連載 第5回 男児は新型コロナ重症の割合が高い?〜小児における新型コロナ重症者の性別での比較〜
日本国内でデルタ株、オミクロン株が流行する以前に、「新型コロナウイルス感染症は男性の方が重症化する方が多い」といった報道をご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
たしかに、複数の研究の結果を統合して解析したメタアナリシスの報告によると、男性で新型コロナが重症化するリスクは女性と比べて1.29倍高いと示されています (1)。
またその後小児においても、男児の方が新型コロナ重症化のリスクが高いという研究結果がアメリカやヨーロッパで発表されています (2,3)。
今回は、日本においても男児の方が重症化割合が高い傾向がみられるのか、調べてみました。
はじめに、国立国際医療研究センターが中心となって立ち上げたCOVID-19 REGISTRY JAPAN( https://covid-registry.ncgm.go.jp/dashboard/ )のデータを参照してみました。このデータベースには、任意で登録に参加している病院に入院された方に関する情報が集められています。
ダッシュボード上では、入院することになった患者数しか確認できませんが、79歳以下ではどの年代においても女性より男性の数が多いということがわかりました。
以上のデータから、日本においても入院患者数には年齢層を問わず男女差があることがうかがわれましたが、入院患者が必ずしも重症者とは限らないため、重症者の実態について参考とするために、JMDC保険者データベースを用いて分析を行いました。
まず、重症を「新型コロナウイルス感染症」かつ「ICUへの入院」と定義し、感染者数全体に占める重傷者の割合をお示しします。
なお、0歳児については、新型コロナの重症化と必ずしも関係ない事情で、出生時にNICUに入院する新生児が一定数含まれることが考えられるため、今回の分析では参考データとして独立してお示ししています。
数値上は1-5歳、12-17歳、18歳以上で男性の方が重症化の割合がやや高いことがうかがわれるものの、各年齢区分ごとにICUに入院となった実人数が数名単位のところから推計した結果であり、具体的な考察を展開するには限界がありそうです。
また、新型コロナウイルス感染症にかかった後、入院先がICUとなるかどうかは、本人の重症度だけではなく、各医療機関のその時点における他の患者さん方の状況などにも依存することが考えられます。
そのため、重症を「新型コロナウイルス感染症」かつ「人工呼吸器の使用」と定義した場合についても、感染者数全体に占める重傷者の割合を調べてみました。
その結果、やはり該当した実人数は少ないのですが、6-11歳、12-17歳、18歳以上で男性の方が重症者の割合がやや高く、ICU入院の場合と同様に、年齢区分があがるにつれて重症化割合の男女差が大きくなる傾向がうかがわれました。
今回の分析では、併存疾患など他の因子は調整していませんが、以上の結果から
・日本においても、男性の方が新型コロナウイルス感染後に重症化する方が多い
・小児においては、年齢区分があがるにつれて重症化割合の男女差が大きくなる傾向がうかがわれる
ことがわかりました。
なお、年齢区分があがるにつれて男女の差が大きくなることについては、文献によると、成人になると喫煙をはじめとする生活習慣や基礎疾患の影響がより大きくなるためだと推察されています(1)。
参考文献
Rahman A, Sathi NJ. Risk factors of the severity of COVID‐19: A meta‐analysis. International Journal of Clinical Practice. 2020;75(7).
Martin B, DeWitt PE, Russell S, Anand A, Bradwell KR, Bremer C, et al. Characteristics, outcomes, and severity risk factors associated with SARS-COV-2 infection among children in the US national covid cohort collaborative. JAMA Network Open. 2022;5(2).
Bundle N, Dave N, Pharris A, Spiteri G, Deogan C, Suk JE. Covid-19 trends and severity among symptomatic children aged 0–17 years in 10 European Union countries, 3 August 2020 to 3 October 2021. Eurosurveillance. 2021;26(50).
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